NASDAQ100は、値上がりによる資産成長を狙いたい人に人気の指数です。
私自身もNASDAQ100は、基本的には「インカムを受け取るため」ではなく、長期的な資産成長を期待して保有するものだと考えています。
ただ、投資を続けていると、
「NASDAQ100に投資しながら、毎月のように現金も受け取りたい」
という考え方も出てきます。
実際、NASDAQ100を利用したインカム型の商品には、いくつかの選択肢があります。
代表的なのが、
- 高配当株
- QYLD
- 563A
- Tracers NASDAQ100インデックス(毎月決算・予想分配金提示型)
です。
一見すると「分配金がもらえる商品」という共通点がありますが、そのお金をどこから生み出しているのかは、それぞれかなり違います。
そこで今回は、4つの方法を並べて、
「NASDAQ100でインカムを得るなら、何が違うのか?」
を整理してみます。
まず結論:違うのは「分配金の作り方」
4つをざっくり整理すると、こうなります。
| 方法 | インカムの源泉 | NASDAQ100との関係 | 上昇相場との相性 |
|---|---|---|---|
| 高配当株 | 企業からの配当 | NASDAQ100とは別の投資 | 配当+株価上昇 |
| QYLD | カバードコールのオプション・プレミアム | NASDAQ100を利用 | 上昇余地を大きく制限 |
| 563A | デイリー・カバードコールのプレミアム | NASDAQ100を利用 | 上昇にも概ね追随を狙う |
| Tracers NASDAQ100 | 基準価額に応じた分配 | NASDAQ100に連動 | NASDAQ100の値動きを比較的そのまま受ける |
つまり、「分配金が多いか少ないか」だけを比較しても、本質は見えてきません。
何を犠牲にして、何をインカムに変えているのか。
ここを見ることが重要だと思います。
高配当株:企業から配当を受け取る
まず、一番分かりやすいのが高配当株です。
企業が事業で利益を上げ、その利益などを原資として株主に配当を支払います。
NASDAQ100のような成長株中心の指数に投資するのとは、少し考え方が違います。
高配当株では、
「企業が生み出したキャッシュを株主に還元してもらう」
ことがインカムの中心になります。
例えば、株価が下落していても、企業の業績やキャッシュフローが維持されていれば、配当が維持されるケースがあります。
もちろん、配当は保証されません。
業績悪化などによって減配・無配になる可能性もあります。
それでも、
「株価が上がることだけを期待するより、定期的な現金収入が欲しい」
という人にとって、高配当株は非常に分かりやすい選択肢です。
高配当株投資といっても、個別株を自分で選ぶ方法だけではありません。
例えば米国ETFなら、VYMのように高配当企業へまとめて投資する方法もあります。
Vanguard High Dividend Yield ETF(VYM)公式ページ
QYLD:NASDAQ100を使ってカバードコールをする
次がQYLDです。
QYLDは、米国上場の「Global X Nasdaq 100 Covered Call ETF」。
NASDAQ100の構成銘柄を保有しながら、NASDAQ100を対象とするコール・オプションを売却するカバードコール戦略を利用します。
つまり、
NASDAQ100を保有する+コール・オプションを売る
ことで、オプション・プレミアムをインカムとして獲得する仕組みです。
Global Xによると、QYLDは2013年から運用されており、毎月分配を行っています。2026年9月時点の公式ページでは、直近12カ月の分配率は12.06%とされています。
ただし、これは将来の分配率を保証するものではありません。
QYLDの最大の特徴は「上昇をかなり手放す」こと
QYLDを理解するうえで重要なのが、カバードコールによる上昇余地の制限です。
例えばNASDAQ100が大きく上昇したとします。
普通のNASDAQ100なら、その上昇をそのまま受け取れます。
しかしQYLDはコール・オプションを売っているため、一定以上の上昇については、その恩恵を受けにくくなります。
その代わりにオプション・プレミアムを受け取る。
非常に単純化すると、
「将来の値上がり益の一部をあきらめて、現在のインカムに変える」
という仕組みです。
だからこそ、QYLDは「NASDAQ100が上がれば、そのまま大きく儲かる商品」ではありません。
値上がり益よりも、現在のキャッシュフローを重視する商品と考えたほうが分かりやすいでしょう。
563A:QYLDより「上昇も残したい」カバードコール
ここで登場するのが563Aです。
正式名称は、
グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバード・コール ETF
です。
2026年4月に東証へ上場した新しいETFで、NASDAQ100を対象としたデイリー・カバードコール戦略を利用します。
563AとQYLDの大きな違いは、カバー率です。
QYLDは基本的に100%のカバードコール戦略を利用する一方、563Aはカバー率を10%前後に抑える設計です。
そのため、563AはQYLDよりもNASDAQ100の上昇への追随を残すことを狙っています。
Global X自身も、563Aについて「NASDAQ100指数の上昇に追随」と説明しています。
QYLDと563Aは、同じカバードコールでもかなり違う
ここは比較すると分かりやすいところです。
| QYLD | 563A | |
|---|---|---|
| 対象 | NASDAQ100 | NASDAQ100 |
| カバードコール | あり | あり |
| オプション | 1カ月物 | デイリー・オプション |
| カバー率 | 100% | 10%前後 |
| インカム | 高水準を狙う | 年率15%程度のプレミアムを目標 |
| 上昇相場 | 上昇余地を大きく放棄 | NASDAQ100への追随を狙う |
| 分配金 | 毎月 | 毎月 |
つまり、かなり乱暴に言えば、
QYLD=インカム重視
563A=インカムも欲しいが、NASDAQ100の上昇も残したい
という違いです。
もちろん、これはあくまで商品の設計上の特徴を簡略化した表現です。
実際のリターンは、NASDAQ100の値動き、ボラティリティ、オプション・プレミアム、為替などによって変わります。
Tracers NASDAQ100:カバードコールを使わず分配する
そして、ここで面白いのがTracers NASDAQ100インデックスです。
正式名称は、
Tracers NASDAQ100インデックス(毎月決算・予想分配金提示型)
です。
2026年9月24日の設定が予定されています。
この商品は、NASDAQ100指数への連動を目指しながら、基準価額の水準に応じて分配を行う投資信託です。
信託報酬は年率0.1991%です。
ここがQYLDや563Aと決定的に違うところです。
Tracersは、カバードコールによってオプション・プレミアムを稼ぐ商品ではありません。
非常にシンプルに考えるなら、
NASDAQ100に投資する → その資産から分配金を受け取る
という仕組みです。
そのため、私はTracersの魅力として**「分かりやすさ」**をかなり評価しています。
「分配金」は無料でもらえるわけではない
ただし、ここは誤解しないほうがいいところです。
例えば、
100万円の資産があって、そのうち1万円を分配金として受け取ったとします。
単純化すれば、
運用資産99万円+現金1万円
という状態になります。
つまり、
「1万円を追加でもらった」
というより、
「100万円の資産の一部を現金として受け取った」
と考えたほうが分かりやすいでしょう。
これは、自分でNASDAQ100を1万円分売却して現金化することとも、経済的には似ています。
だからこそ、私自身は資産形成中なら、
「分配金をもらうために、わざわざ分配型商品を選ぶ必要があるのか?」
と考えてしまいます。
4つを「インカムの作り方」で比較すると分かりやすい
ここまでの話を、もう一度整理してみます。
| 高配当株 | QYLD | 563A | Tracers NASDAQ100 | |
|---|---|---|---|---|
| 主なインカム源 | 企業の配当 | オプション・プレミアム | オプション・プレミアム | ファンドからの分配 |
| NASDAQ100への連動 | なし | あり | あり | あり |
| カバードコール | なし | あり | あり | なし |
| 上昇余地 | 企業次第 | 制限される | 一部残す設計 | 比較的そのまま |
| 毎月分配 | 銘柄による | あり | あり | あり |
| 仕組みの分かりやすさ | 比較的分かりやすい | やや複雑 | やや複雑 | 分かりやすい |
| インカム重視 | ○ | ◎ | ○~◎ | ○ |
| 成長との両立 | 銘柄次第 | △ | ○ | ○ |
この表を見ると、4つの商品が同じ土俵ではないことが分かります。
「どれが一番いい?」ではなく、何を重視するか
ここまで比較すると、
「じゃあ結局どれが一番いいの?」
と思うかもしれません。
私は、これは一概に決められないと思います。
なぜなら、そもそも目的が違うからです。
企業の配当が欲しい
→ 高配当株
企業そのものを選び、配当を受け取りたい人。
NASDAQ100を使って高いインカムを狙いたい
→ QYLD
NASDAQ100の値上がりをある程度手放してでも、カバードコールによるインカムを重視する考え方。
インカムも欲しいが、NASDAQ100の上昇も残したい
→ 563A
QYLDよりもカバー率を抑え、NASDAQ100の上昇への追随を狙うカバードコール。
NASDAQ100をできるだけシンプルに持ちながら分配金も欲しい
→ Tracers NASDAQ100
オプション戦略を使わず、NASDAQ100への連動を目指しながら分配する投資信託。
私ならどれを選ぶのか
ここからは完全に個人的な話です。
私は現在、インカムをそれほど必要としていません。
資産形成中なので、
「毎月10万円もらえること」より「資産が10万円増えること」
のほうが重要です。
そのため、私自身は高配当株、QYLD、563A、Tracersのどれかをインカム目的で積極的に買う必要性は感じていません。
普通のNASDAQ100を持って、必要になったら自分で一部を売却すればいい。
これが一番シンプルだからです。
それでもTracersに少し惹かれる理由
とはいえ、4つを比較してみると、個人的にはTracersが面白いと思います。
理由はやはり、
「分かりやすい」
からです。
563AやQYLDは、カバードコールという仕組みを理解する必要があります。
もちろん、仕組み自体は非常に面白い。
ただ、
NASDAQ100を持つ
↓
その資産から分配する
というTracersのほうが、直感的には理解しやすい。
さらに私は投資信託が好きなので、その点でもTracersには魅力を感じます。
そしてNASDAQ100そのものについて、私は長期的な成長を期待しています。
だからこそ、NASDAQ100の上昇余地を大きく手放すQYLDより、通常のNASDAQ100に近い形を維持するTracersや563Aのほうが、自分の考え方には近いと感じます。
ただし、
563AとTracersのどちらが優れている、という話ではありません。
563Aはオプション・プレミアムを利用することでインカムを生み出す。
TracersはNASDAQ100の運用資産から分配する。
仕組みそのものが違うからです。
暴落したら、どの商品でも「無傷」ではない
そして、インカム型の商品を考えるときに忘れたくないのが暴落です。
「毎月分配」と聞くと、
暴落しても毎月お金が入ってくる
ように感じるかもしれません。
しかし、分配金は保証されているわけではありません。
また、QYLDや563Aのようなカバードコールでは、オプション・プレミアムがインカムの重要な源泉になります。
QYLDの場合、ボラティリティが高い局面ではオプション・プレミアムが高くなる傾向がありますが、だからといって元本の下落を防いでくれるわけではありません。
563Aも同様です。
NASDAQ100が大きく下落すれば、当然ながらNASDAQ100へのエクスポージャーは影響を受けます。
TracersもNASDAQ100に連動する以上、NASDAQ100が下落すれば基準価額は下落します。
高配当株も、企業業績が悪化すれば株価だけでなく配当にも影響が出る可能性があります。
つまり、
「インカム型=暴落に強い」ではありません。
ここはかなり重要です。
それでも「インカム」が欲しい人には意味がある
では、インカム型の商品には意味がないのでしょうか。
私はそうは思いません。
例えば、
「資産を取り崩すのが心理的に嫌だ」
「毎月ある程度の現金収入が欲しい」
「値上がり益よりもキャッシュフローを重視したい」
という人なら、インカム型の商品には明確な意味があります。
特に高配当株なら、
企業から配当を受け取りながら株式を保有する
という分かりやすいスタイルがあります。
カバードコールなら、
値上がり益の一部をオプション・プレミアムに変える
という考え方があります。
Tracersなら、
NASDAQ100を保有しながら、ファンドから定期的に分配を受け取る
という方法があります。
大切なのは、「分配利回りが高いから買う」ではなく、
自分が欲しいキャッシュフローを、どの方法で作りたいのか
を考えることだと思います。
まとめ:分配金の「額」より、どこから生まれるのかを見る
NASDAQ100を利用してインカムを得る方法には、いくつかの選択肢があります。
高配当株なら、企業が生み出した利益などから配当を受け取る。
QYLDなら、NASDAQ100を利用したカバードコールでオプション・プレミアムを得る。
563Aなら、デイリー・カバードコールによってインカムを狙いつつ、NASDAQ100の上昇にもある程度追随する設計になっています。
そしてTracers NASDAQ100なら、カバードコールを使わず、NASDAQ100への連動を目指しながら基準価額の水準に応じて分配します。
つまり、
高配当株=企業からの配当
QYLD=カバードコールによるインカム
563A=上昇余地を残したカバードコール
Tracers=NASDAQ100+分配
と考えると、かなり整理しやすくなります。
私自身は資産形成中なので、インカムを受け取るよりも資産そのものを成長させたい。
そのため、今のところは通常のNASDAQ100のほうが自分には合っています。
ただ、
「インカムが欲しい」という目的があるなら、Tracersはかなり分かりやすい選択肢です。
そして、オプションを利用してインカムを作ることに興味があるなら、QYLDと563Aも面白い。
結局のところ、どれが一番というより、
「自分は何をインカムに変えているのか?」
を見ることが大切なのではないでしょうか。
暴落時は……歯を食いしばりましょう。笑
